ぼちぼちと都市に暮らす

住んでいる大阪の街についていろいろとかんがえてみる。

218億円と大阪市財政局 その2

前回のブログで毎日新聞が報道した基準財政需要額218億円について、大阪市財政局の確信的行為ではないかと推測しました。

その理由はあまりにも不可解な点が多いためです。

そして11月18日付けの読売新聞から驚くべき記事が報道されました。読売新聞によると「1日に否決された『大阪都構想』の住民投票に関連する公文書を、大阪市財政局が故意に廃棄し、議員に文書の存在を隠蔽していたことがわかった」というものです。

18日の市議会特別委員会で、財政局長や担当課長が公文書の廃棄に言及したとのことです。これは毎日新聞記者から10月25日にメールで原稿を2枚受け取り、課長が印刷して局長と財務部長に見せたものです。

なぜ廃棄したのかその理由は、10月26日の毎日新聞に財政局の担当者は、『都構想の4特別区の行政コストが今回の試算と同額になるとは限らないが、デメリットの一つの目安になる。』」と報道しています。これまで財務課長は「デメリットの一つの目安になる」という発言はしていないと否定していました。廃棄した文章はその発言が嘘だった、財政局が組織ぐるみで工作したことが露わになるからでしょう。

財政課長は11月11日大都市・税財政制度特別委員会で大阪維新の高見議員の質問に対して、新聞社から基準財政需要額について質問があったので試算して回答したというような答弁をしています。つまり情報提供をしただけだということですが、都構想のデメリットの一つになると言及していれば情報提供しただけではなく、財政局としての見解の表明です。

住民投票成立を阻止するための工作だったといっても誤りではないでしょう。その意図を隠すために2枚目の文書を廃棄処分したとしか考えられません。なぜなら自分たちに何もやましいことがないなら証拠を隠滅する必要などないからです。幸い廃棄された資料はサーバーに残っており、資料として復活するようです。本当に嘘はばれる、悪いことは出来ないという見本のような事件です。

大阪市財政局財政長・財務部長・財務課長、この3人が大阪都構想住民投票不成立を画策し、マイナス情報の発信を計画したことは間違いないと思います。

これまで財政局長と財務課長は、「業務担当範囲である基準財政需要額に対しての質問に回答した」、「住民投票前だったが十分に説明すれば理解されると考えていた」、「反響の大きさに驚いた」、「あり得ない試算であり捏造と言われても仕方がない」とあくまでも故意ではなく過失だったと弁明しています。

18日の市議会特別委員会ではっきりしたことは、218億円報道は過失ではなく故意に計画されたものだったということです。18日の読売新聞には、「財政課長は18日の委員会で『財政局を挙げて記事を確認し、(毎日)共作したと受け止められてしまう不安があったと』説明、廃棄した事実は当初、松井一郎市長にも報告しておらず」と書いてあります。

言い訳していますが、要するに毎日新聞と共作した訳です。

新聞社の倫理として取材対象の介入を招く恐れがあるため、原稿を事前に取材対象者に渡すことはありえないらしいです。今回はありえないどころか大阪市財政局と毎日新聞の共作ということは揺るがしようがないと思います。全容が解明されたとは言えませんが、大阪市民の大きな政治選択を大幅に捻じ曲げたことは間違いありません。

果たして今回の大阪市における特別区設置の住民投票は有効だったのでしょうか?

手続きに大きな瑕疵があったにもかかわらず結果が不変ならば、どんな悪いことをしても、嘘をついて騙してもやった者勝ちになってしまうのではないか。さらに本当に財政局長・財務部長・財政課長の3名だけの計画だったのか、その背後には財政局管理者を動かすなんらかの圧力の存在があったのではないか。

今回のこのような事件が起きた原因の一つには、特別区設置法で住民投票は関係市町村のみとなっていて、大阪市外の大阪府民には投票権がないことも大きいと思います。都構想が否決されたことで「特別自治市」の要望が高まっていますが、昔の特別市運動もこのような雰囲気だったのでしょう。特別自治市を要望する政令市長のなかには、特別自治市設置の住民投票を「関係市町村」にするべきという声があります。

これは要するに特別自治市に移行する場合は、政令市住民のみに投票を限定するということです。この意図は政令市以外の府民や県民に投票券を与えると否決されるからです。

過去の特別市設置の時も市民のみの投票だったものが、知事の猛反対で広域行政全体の投票に変更され、特別市実現は絶たれた経緯がありました。つまり大都市制度選択に住民投票手続きをする場合には、投票範囲を政令市に限定するか道府県にするかで成立と不成立がほぼ決まってしまう事実は重要だと思います。今回の大阪都構想住民投票は、大都市問題の改革が極めて複雑で困難であることを再確認することになりました。

大都市問題は別のテーマで考えていこうと思います。