東京都と都区制度 大都市制度を考えてみる
明治11年の郡区町村編制法で東京府に15区が設置されました。明治22年に市町村制が施行され15区が東京市になります。その後の市域拡張で35区になります。昭和18年の戦時体制下の東條政権により、東京府と東京市が廃止され「東京都」が誕生し、昭和22年以降に35区の再編が行われ現在の23区の特別区になりました。
特別区は一般市と同じ自治体だったのですが、戦後復興のため昭和27年の自治法改正で東京都の内部団体になり、区長を選挙で選ぶことがでなくなります。それから50年にわたり特別区の自治権獲得運動が行われてきました。そして平成12年に内部団体から、自治法改正によって「基礎的な自治体」となり2層制が復活しました。
【都区制度の特徴】
①政令指定都市制度以外の大都市地域に適用される制度
②広域行政と基礎自治体との一体性を確保する
③都区調整制度により東京都から特別区へ財政調整が行われる
■広域行政と基礎自治体との一体制
都区制度は広域行政と基礎自治体とが同じ方向に向くことを重視しています。それは両者の納得というよりも、制度として一体になるように設計されていると言って良いでしょう。賛否は別として都区制度は広域行政を強化する方向性を持っているということです。
政令市と広域行政は二重行政が問題視されるように、なかなか広域行政と基礎自治体である政令市の一体性は難しいのが事実です。そもそも巨大な大阪市が、基礎自治体であるというのも釈然としませんが…
■都区財政調整制度
都区制度のもう一つ特徴的なものは、財政調整制度です。簡単に言えば特別区内で集めた税金を一旦東京都に入れて、特別区に再配分するというものです。区によって税収が違うので、各特別区の運営に必要な資金を東京都が調整配分する訳です。
どうやって各特別区に配分決定するかと言うと、大阪市財政局と毎日新聞がやらかした218億円問題です。国の交付税交付金制度は「交付額=基準財政需要額-基準財政収入額」という計算で算出しますが、都区財政調整制度も同様な計算方法です。ただ、東京都は不交付団体なので国からの交付金は受けていません。
実は財政調整制は大阪市でも行政区に行っており、税収の高い北区・中央区・西区からの税収を大阪市が他の21区に調整配分しています。そうでなければ税収の少ない行政区は何も施策ができないことになります。
特別区は基礎自治体なので区長も区議会議員も選挙で選びます。保健所も設置するので、普通の市と変わらない点も多いですが都市計画や、普通の市にある権限の一部与えられていません。
東京都は日本で最も大きな広域行政体でニューヨークやロンドン・パリと競合する強力な大都市ですが、基礎自治体の特別区においては不満も根強く残っています。その大きな原因の一つに税源の配分があります。大阪都構想では4特別区(大阪市内)の財源8500億円を特別区77(約6500億円):大阪府23(約2000億円)で分けることになっていました。これに対して東京都では特別区45:東京都55という配分になっており、半分以上が東京都の収入になってしまいます。それだけ特別区が思うような使途には、使用することができないということになります。
東京都は年間13兆4千億円の予算規模で、職員数16万人を超える超巨大な組織ですが、基礎自治面については十分とは言えない点が多くあります。それら特別区の問題点を、可能な限り改善したものが大阪都構想の4特別区案でした。ですから大阪都構想の実現は、東京都政と特別区の関係改善にも大きな影響を与えることができたはずです。しかし不成立の結果に終わってしまい非常に残念でした。
十分とは言えない東京都の都区制度をベースにするため、制度的な問題がクローズアップされ、大阪都構想の批判材料になることは大都市制度を考える上での障害になったと思います。だからと言って妥協の制度と言われている、政令市の制度が都区制度より優れているという話にはなりませんが。
これまでの大都市制度は人口増加による都市化の問題でしたが、これからは人口減少とインフラの老朽化や、経済低迷というかつての逆になってきます。特に大都市は高齢者人口が多く、社会福祉分野での問題が大きくなってくるでしょう。今後の大都市にはどのような制度が求められるのか、まだまだ試行錯誤は続きます。ただ、現状の都区制度や政令指定都市制度が、今のままで良いはずはありません。
国の地方分権でも同じですが、広域行政と基礎自治体の関係は集権と分権の競いと言えるかもしれません。強い広域自治体が望ましいのか、それとも強い基礎自治の方が良いのか。100年以上も続く問題ですから簡単な解決策がある訳がないですが、それでも新たな大都市制度が必要にことには変わりはありません。