ぼちぼちと都市に暮らす

住んでいる大阪の街についていろいろとかんがえてみる。

大阪の成長戦略ってどうなってる?

12月20日のネットで『自民党大阪府連が「大阪成長戦略本部」を発足 大阪市を発展させる政策を話し合う』という記事が出ていました。

自民党大阪府連は大阪都構想住民投票について、「否決はされたが、大阪市の停滞打破を望む民意は重く受け止めるべき」と総括していて、国や大阪府大阪市などへの政策提言を目指していきたいとしています』とのことです。

今のところ何も具体的なものはなく、とにかく成長戦略を検討しようということらしいですが、過去の選挙公約などを見ると「近畿メガリージョン」など、従来からの自民党らしい公共事業依存の政策しか見ることはできませんでした。果たして今回はどのような成長政策を提示するのか興味があります。

大阪の成長政策については、橋下知事時代の平成22年(2010年)に2020年を目処にした「大阪の成長戦略」が作られています。その後平成25年に大阪府大阪市の戦略を一本化し、国家戦略特区の指定、関空の再生、うめきた再開発、なにわ筋線の実現、統合型リゾートの誘致など数多くの計画が実行されてきました。

個人的な主観は別として、一般の大阪府市民からは少なくとも2010年以前の大阪よりも、ずっと活気が出てきたと実感できるのではないでしょうか。

今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、インバウンドが壊滅的な影響を受け、インバウンド政策自体が間違いのような意見もありますが、管理人は少なくともそうは思いません。その理由は京都や大阪・奈良など世界でも有数の観光資源を持っているからです。なぜインバウンドかと言えば、大阪府大阪市も財政が厳しい状態だったからです。

普通は新たな事業を興そうとすれば、巨額の投資資金が必要になります。過去に大阪市ベイエリア開発のため数兆円を投資して大失敗しました。ところが大阪府自体が財政破綻寸前だったのですから、巨額の投資などできる訳がありません。そこで橋下知事が行ったことが、関空伊丹空港の統合とLCCの誘致でした。またアベノミクスの円安による追い風もあり、以後のインバウンド需要は空前の活況を実現しました。

インバウンドは単なる観光需要というよりも、お金のない大阪が外資を得られる貴重な外資導入政策でした。インバウンド需要により難波を始めとする地域は、大変な需要が生まれ、ホテルの建設ラッシュなどにより不動産価格は上昇、求人増加による失業率の改善など多くの経済効果をもたらしました。

今後のイベントとしては、2025年の関西万博と誘致実現するであろう統合型リゾートがあります。ただ万博は一過性のイベントであり、統合型リゾートは観光政策の延長線上でしかありません。やはり肝心なのは大阪に新しい産業が、生まれるか否かではないかと思います。そこで非常に優れた機会になるだろうと思われるのが、2025年の関西万博です。この万博は「未来社会の実験場」と位置づけられており、新しい物事を試みるにはまたとない機会になるはずです。

大阪府では今後の成長政策として「健康・医療関連産業の世界的なクラスター形成」「インバウンドの増加を契機としたアジア市場の取り込み強化」「第4次産業革命に対応したイノベーションの促進と生産性向上」「人口の減少と産業構造の変化に対応した人材力強化」などを具体的にあげています。

インバウンドはどちらかと言えば、海外に先行事例があるので計画しやすかったと思いますが、新産業となると簡単にはいきませんし、これまでのような潜在的な資源を有効活用する方法も取りにくく、何らかの投資を伴うことになるでしょう。また投資したから成功するとは限らないところが新産業です。再生医療は今後の成長する産業に発展するでしょうが、そのような分野こそ世界が競う領域でもあります。残念ながら大阪府大阪市の一体化は否定されましたが、世界と競合していく上で大阪の一体性が保てるのかにはやはり不安が残ります。

最近もう一つ期待できる動きも出てきました。それはSBIグループの北尾代表が、大阪や神戸に金融機能を作ると表明したことです。菅政権も金融都市を設置する動きがあります。大阪は古くは米相場があり、先物取引を世界に先駆けて行って来た都市でもあります。住友銀行(現三井住友銀行)や三和銀行(現三菱UFJ銀行)、大和銀行(現りそな銀行)に野村證券も大阪発祥の企業です。東京と違い交易都市として発展してきた歴史は、金融都市としての能力が十分に発揮できるではないでしょうか。

万博を契機とした新産業と金融がうまく結びつき、新しい産業創造都市に変貌することを期待したいと思います。