ぼちぼちと都市に暮らす

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新型コロナウイルスに見る危機管理の政治とは

1月に国内感染が確認された新型コロナウイルスは、もうすぐ1年を迎えようとしています。昨日は菅総理が新たに入国禁止措置を発表したところです。期待できるのは海外でワクチン接種が始まったことでしょう。先のブログにも書いた指定感染症の問題が最近改めて記事に取り上げられています。

12/27にはデイリー新潮に「保健所が厚労省に「2類指定を外して」 体制の見直しで医療逼迫は一気に解消へ」という記事がでています。その中で『医師でもある東京大学大学院法学政治学研究科の米村滋人教授は、 「医療逼迫の真の原因は、日本の医療体制そのものにあります」』と言及しています。

また、今日12/29のPHPオンラインでは学習院大学経済学部の鈴木亘教授が、『一人当たりの病床数は“ダントツ”の日本が「医療崩壊の危機」に陥る理由』で、医療崩壊の要因を明確にしています。

テレビでは医療崩壊の危機を盛んに取り上げていますが、鈴木教授の記事には「2017年時点で、日本の人口1000人当たり病床数は13.1と、先進各国(OECD加盟国)平均の4.7を大幅に上回る。」とあり、これほど多くの病床数を持つ日本で、どうして病床不足が起き、コロナ対策が有効に機能しないのか。その理由として、以下の5つを取り上げています。

「やりすぎ」だった厚労省
一般病床の受け入れを増やせぬ理由
金銭的補償の問題
都道府県間の協力関係が希薄
機能分化の遅れと勤務医不足

『「やりすぎ」だった厚労省』は、指定感染症の措置が厳しすぎたという指摘です。PCR検査数が足りない、ICUが不足している、看護士が足りない等は結果であり、指定感染症自体を見直さなければ根本的問題は解消しないでしょう。

また、「金銭的補償の問題」では、医療機関に対する厚労省の金銭的補償の欠如があります。診療報酬の引き上げや空き、病床に対する交付金など小出しにして、まったくの受け身対応です。

都道府県をまたいだ病床数の融通もうまくいっていません。都道府県間の協力関係が希薄についても、「近年、地域医療構想によって、病床削減や機能別病床の適正化についても、都道府県の責任が強く求められ、都道府県ごとに進捗状況を競わされてきた」ということで、厚労省には一般医療のみを熱心に取り組み、感染症に対する危機管理が皆無だったということです。

まったく柔軟性を持たない医療制度を、どうして政治家たちは真剣に考えないんでしょうか。6月ごろに日本維新の会の梅村聡参議院が国会で、指定感染症の見直しを提案しています。気づいている政治家は存在し、9月ごろには見直しの議論も上がっていました。しかし結果的には何も変わらず、年明けの2月にはさらに1年延長する方向に向かっています。

新型コロナウイルスの対策を最優先して、10月解散を見送った菅総理ですが、最近は支持率が急落しています。その理由はコロナ対策に対する対応が評価されていないことです。最優先政策によって支持率が急落しているとは、なんとも皮肉な話です。外交で力を発揮した派手な安倍前総理、菅総理は内政の特に制度改革が得意です。しかし、危機管理に対しては、2人ともまったく力を発揮できません。

この理由は「時間」がないからです。通常の政策課題は短期間で結果を求められることはありません。政策によっては数十年も議論が続いていることも稀ではありません。自民党の政治体制は、根回しや時間をかけて妥協点を見つけることが多く、急激な危機に対して毅然と対応するノウハウが無いように思います。民主党政権時代の福島原発事故の対応を考えると、自民党だけではないのかもしれませんが、管理人を含めて多くの日本国民は、今回の新型コロナウイルスで、政治の危機管理能力の低さを痛感することになったのではないでしょうか。

その点で賛否はありますが、大阪府の吉村知事の決断と実行力は特筆すると言っても良いでしょう。議員内閣制と違い直接選挙で選ばれる知事は、大統領制に近いのかも知れませんが、「決断できない、実行できない」という政治こそ、コロナ危機の根本的な原因かもしれません。