ぼちぼちと都市に暮らす

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二重行政の解消と広域一体条例の意味とは

1月5日のABCニュースには「大阪都構想の【代案】まちづくりは広域一体条例案 調査で賛成が反対上回る」と賛成が、反対を大きく上回ったようです。まだ具体的な条例案も示されていませんが、大阪市民にとっては、二重行政の解消は概ね良いという判断なのでしょう。

二重行政は嫌だが大阪市を廃止するのはNOという判断の中で、広域一元化条例の案が示される運びとなっています。2月議会に提案されて議論されるのですが、この条例案がどれほど有効なのかは今のところ見当がつきません。

根本的な解消方法は大阪市を廃止して、大阪府に一元化する大阪都構想ですが、住民投票で否決されましたから、静岡県の川勝知事いわく「『二重行政』という課題の解決に向けて知恵が求められている」とすれば、広域一元化条例は一つの知恵ではあります。

広域一元化条例の拘束力がどの程度になるのか分かりませんが、条例には罰則を課すことができます。しかし、さすがに首長に対して罰則を設けることはできないでしょう。

二重行政解消に関する条例と言えば、自民党大阪府連が政策立案し、大失敗で終わった「大阪戦略調整会議」(大阪会議)が思い出されます。知事と政令市長と両議会議員が集まり、広域行政に関する議論を行うことで、二重行政の解消と広域戦略が実現できると豪語していました。しかし、結果は散々で橋下市長からは「大阪ポンコツ会議」と揶揄され、議論にすら入れず終わってしまった悪夢のような事例でした(結局これが2度目の住民投票の契機になったのでが…)。

大阪会議が失敗した理由はいくつもありますが、管理人としてはマネジメントと決定権が、まったく不明確だったことに尽きるのではないかと考えています。大阪会議のベースは地方自治法における、「指定都市・都道府県調整会議」です。地方制度調査会で提言され、総務省自治法を改正して追加したものです。

この調整会議も決定権が付与されていません。もし知事と政令市長が決定で決裂した場合は、有識者が検討して解決を提案するという内容だったと記憶しています。これでは大きな効力は期待できません。今回の広域一体条例は、調整会議をさらに前にすすめるという位置づけのように思います。つまり話し合いだけではなく、都市計画や成長戦略を副首都推進局で取りまとめ、福祉や教育は従来通りに大阪市で行うという方式です。

話し合いではなく具体的にテーマを絞って、大阪府大阪市の機能を一つにして計画立案するという試みなのでしょう。

問題はどれほど実現可能かということになるのではないか。副首都推進局が成長戦略案や都市計画案を策定して提案したとして、知事と政令市長が合意するのか、知事と政令市長が合意したとして、府議会と市議会で成立するのか。大阪維新の知事と大阪市長である限りは、知事と市長の合意は問題ないでしょう。しかし、どちらかが大阪維新出身でなくなった場合に、合意が担保されるのかが不明です。

また、府議会と大阪市議会も同様に議案が成立するのかも分かりません。大阪都構想が実現していれば、大阪府議会だけで決定が可能ですが、2つの議会で成立させるのは難しさがあります。特に大阪維新過半数を持たない大阪市議会では、他会派が決定を左右することになります。

二重行政をなくすには、広域行政と政令市の重複権限に優先度をつければ済むことです。今回の一元化条例のように成長戦略・都市計画などは知事に優先権限を持たせれば、権限の衝突は起きません。しかし、それが出来ないから大阪都構想や一元化条例が出てくる訳で、地方自治法というよりも痴呆自治法とでも言うべきかもしれません。

成長戦略や都市計画など広域行政で取り組むべき事務は、都道府県に権限を優先させるように、法律を改正すべきではないかと思います。

特別自治市制度で問題になるのは警察問題です。特別自治市は広域行政の権限をすべて、特別自治市が持つことになり、そこには当然に警察も含まれます。そうなると例えば、大阪府警は大阪特別市警の管轄に手を出すことが出来なくなり、広域捜査に大きなマイナスになります。

こんな不効率なことを何十年も行っているのが、二重行政問題です。今回の大阪府大阪市の広域一元化条例は、二重行政解消ということでは意味があるのですが、本当に必要なのは地方自治法を改正して、行政区画に応じた権限の再定義ではないかと思います。